美文字とは
美文字とは、文字の形が整っていて読みやすい手書きの文字を指す言葉です。この字はこのように書くべきと「型」がほぼ決まっていて、いくつかの基本的なルールやテクニックを学ぶことで、誰でも書くことができるようになる書体です。書道を専門的に学んでいる人以外の現代人が、目標とすべきといった風潮のある書体でもあります。
手書き文字の本当の魅力
美文字が持つ整った形は、確かに見た目には美しく、一見すると書き手の技術の高さを示しているように思えるかもしれません。しかし、美文字は個性や情感といった手書き文字にとっての大切な味わいを欠いているのです。美文字というのは、いわばペン字フォント(あるいは美文字フォント)を手書きで書き出したものです。手書き文字の本当の美しさが何たるかは、各人の美的価値観に基づくものなので定義づけられませんが、少なくとも、頭にインストールしたペン字フォントを金太郎飴のように書き出していく行為から生まれることはないでしょう。
読み手は美文字フォントで喜ぶのか
手書き文字は、単に情報を伝えるための道具ではなく、書き手の個性や人柄、感情、美的価値観などを表現する手段でもあります。美文字を追求すればするほど、それらの大切な要素を抑えることになり、手書き文字の持つ魅力を半減させてしまうでしょう。事務的な文書で、印刷物のような整いの方が読み手のためになる場合なら、美文字一色でも問題ありません。しかし、手紙など、個人的な思いや考えを伝える際には、書き手の個性や感情が強く反映される自由な書き方の方が、受け取る人にとっての価値が高まると言えるでしょう。
目標は、美文字と個性の融合
美文字を書けるようになること自体が悪いわけではありませんが、それに囚われ過ぎることなく、自分の個性を大切にすることも重要です。美文字は一つの書体例にすぎず、唯一の正解ではありません。自らが自由に発想して書いた個性的な文字に宿る独特の魅力も大切にして、美文字と個性をバランス良く融合させることが、文字を書く上での目指すべき目標かもしれません。