筆を立てて書く、寝かせない、その意義

力強い線の出し方 ~筆を立てて書く=毛束を開いて紙をつかむ~

 「筆を立てて書きましょう。寝かせて書いてはだめです。」といった習字のアドバイスを、お聞きになったことがあるのではないでしょうか。そして、「なんでだろう。まあ、そういうもんか。よくわからん。」そんな印象ではありませんでしたか?

 

 ここでは、その意義、理由を解説いたします。筆を立てて紙に接触させる(垂直に近いくらいのイメージ)ことで、筆の毛束が開き、毛が紙を捉えようとします。紙を毛束が掴むように書くことで、力強く深みのある線となります。逆に、筆の毛束を開くよう意識していれば、筆は立てざるを得ないので、自然と良い角度の持ち方になってくるでしょう。

 

 ダメな書き方は、筆の毛束を拡げずに、寝かせ気味に紙に接触させ、紙をやさしく撫でるようにスライドさせる書き方。この書き方なら、極端な話たとえ毛が10本しかなくても太い線が書けるわけですが、このような書き方では、いくら太く書いても、力強く深みのある線は出せません。マジックで書いたような何とも平面的でのっぺりとした線にしかならないのです。大筆でも、小筆でも同じです。

 

下の写真をご参考ください。

 

 

毛束がしっかり開いた書き方(力強く深みがある)

小筆の使い方・筆遣い(筆ペンのコツ)
小筆の使い方・筆遣い(筆ペンのコツ)

筆を立てぎみに持って筆圧をかければ、毛束が開き、力強い線を書けます。

 

 

×

毛束が閉じた書き方(ただ太いだけで、のっぺり、平面的)

筆の角度が傾きすぎると(寝すぎると)、この線になってしまいます。

 

 


 同じ幅の黒い線が書かれているだけのはずなのに、そこに宿るエネルギーは全く異なるという不思議。これが書の魅力、奥深さです。

 

 一見、始筆と終筆部分以外は同じ幅の黒い線のように見えるかもしれませんが、輪郭線の様子は実はずいぶんと異なります。筆を寝かせてしまって、毛束が紙を掴むように捉えられていない線の輪郭というのは、不自然なギザギザがあり、いびつ感・ためらい感といった悪い印象へとつながります。毛束が紙をガシッと掴んだ線であれば、滑らかさや疾走感・堂々とした躍動感を表現できます。厚みのある立体的な線、温もりを感じさせるような魅力的な線となります。

 

 



書家 鳶山のロゴマーク