筆ペンだけで命名書を書く方法と、力強い筆使いのコツ

現在主流の筆ペンといえば、穂が本物の小筆のように毛の束でできた筆ペンです。この筆ペンの穂は、見た目は小筆と大して変わりませんが、能力的には随分と異なります。

 

このタイプの筆ペンであれば、かなり極太の線をカスレることなく書き続けることができます。墨汁切れが起こらないという特性のおかげです。普通の小筆であれば筆ペンほどの極太線は書けませんし、太い線は1画書いただけでカスレてくるでしょう。

 

さらに、筆ペンなら極太の線を書いていても、弱い筆圧に戻した際、瞬時に元のきれいな状態(まっすぐ先の尖った状態)になってくれます。このような便利な能力を最大限生かして使えば、小さめの命名書くらいなら書けてしまいます。

力強い極太の線の出し方

筆の毛束を開くよう意識して、強い筆圧をかけることで力強く太い線を書くことができます。勘違いしてはいけないのが、筆の毛束をあまり開けずに、筆の毛の長さだけに頼って単純に横へスライドさせるような書き方。この書き方なら、たとえ毛が10本しかなくても同じ極太な線が書けるわけですが、このような書き方では、いくら太く書いても、力強く深みのある線は出せません。毛束の横っ腹の部分だけで書いた線というのは、マジックで書いたような何とも平面的でのっぺりとした線にしかならないのです。(ちなみに、筆ペンにしても小筆にしても、あるいは大筆でも、このことは全く共通です。)

 

文章では伝わりにくいと思うので下の写真で違いをご覧ください。

毛束がしっかり開いた書き方(力強く深みがある)

小筆の使い方・筆遣い(筆ペンのコツ)
小筆の使い方・筆遣い(筆ペンのコツ)

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毛束が閉じた書き方(ただ太いだけで、のっぺり、平面的)


小筆の使い方・上達の方法(筆ペンのコツ)

同じ幅の黒い線が書かれているだけのはずなのに、そこに宿るエネルギーは全く異なるという不思議。これが書の魅力、奥深さであります。単純に物理的に力強く筆を押し付けさえすれば、深く強い線質になってくれるというわけではないので、もどかしく感じるかもしれませんが、上記のポイントを念頭においてしばらく練習すれば、違いが現れてきます。

命名書のレイアウト

市販の命名書をご利用になる際は不要の内容です。

 

私の感覚的には、市販の命名書のように予めどなたかの字で「命名」とか「年・月・日」などが記入されているものは、どこか違和感を感じてしまいます。挿絵などが入っていて一見おめでたい雰囲気はあるのですが、全ての字を親自身が想いをこめて書いたものにこそ、魂が宿った最高の命名書になる思います。

 

 

●文字サイズの目安・・・「太郎」>「命名」>「長男」≧「生年月日」≒「両親のお名前」≧「体重・その他」

(規則があるわけではありません。)

 

●下の画像は配置の一例です。どこにどのパーツを持ってくるとか、どのパーツを省略してその分「名前」を大きくするとか、あなたのお好みでレイアウトしてください。下の例では、「平成~」が「命名~」より低い位置にきていますが、「命名~」より高い位置に配置してもどちらでもよいです。 

 

●消しゴムで消すことのできるような用紙であれば、鉛筆で軽~くレイアウトの下書きをしてから筆入れをすれば、整った仕上がりになります。

 

 

命名書の書き方のコツ(基本レイアウト方法と文字サイズ比較)
一般的なレイアウトと文字サイズの目安 (番号は大きい順)

書く順番とポイント

 

【鉛筆の下書き無しの場合】

まず紙面の中心にメインの字(名前)を書き据えてしまいます。右とか左から順番に書くと、メインの字が中心からずれてしまいやすいためです。

 

【鉛筆の下書きありの場合】

鉛筆で薄く下書きを施している場合は、一番左の行から書き進めるとよいと思います。書いた字を手でこすって汚損してしまうのを防げます。

 

あとは、成功するまで何枚も書くだけです。

 

もし市販の命名書用紙ではなく、習字の半紙に書く場合は、にじみが多少出ますので、独特の味わいが生まれます。さらに、にじむことで、線が少し太くなるのでサイズ感がアップします。その性質を上手く利用し、大きく太く書きたい部分(名前)では、特にゆっくり書くとよいです。

 

ちなみに、色紙には、つるつるの紙ではなく、半紙のようににじみやカスレの出せる「画仙紙張り」の色紙も売っていますので、色紙でにじみを出したい方は、探してみてください。特別珍しいものではありませんので、100均でも売っています。

 

半紙や画仙紙は吸水力が大きいので、筆ペンでもカスレが出やすくなります。あえてカスレを出したい場面以外では、こまめにインク補充をする必要があります。 

最後の仕上げ。飾る!

半紙に書いた場合は薄っぺらいので、そのまま額に入れると、紙が少し透けてしまいます。ですので、額に入れる場合には、同じ半紙を後ろに何枚か重ねるとよいでしょう。

 

もしくは、裏打ちという方法もあります。裏打ちとは、霧吹きで繊維を伸ばした後に、糊付けした和紙で裏から補強する方法です。とても見栄えが良くなります。通常、書道の作品を額装したり掛け軸にしたりするときにはこの「裏打ち」が施されています。書道用品店や額装屋さんや表具屋さんへ頼まないといけないのですが、半紙サイズでしたら数百円で、しかもたいていその場で即日やってくれます。

 

ただし、裏打ちをなさる場合は、必ず「顔料インク」の筆ペンで書いたものにしてください。染料インクの筆ペンで書いたものを裏打ちすると、霧吹きで文字がにじんでしまい、台無しになるので気を付けてください。染料インクは何年乾かしても、水をかければ溶け出してしまいます。なお、墨汁で書いたものは、もちろん問題無く裏打ちできます。(下の写真をご参考ください。)

 

やはり、出来上がった後の飾りやすさにおいては、色紙、奉書紙、画用紙などのように厚くしっかりした用紙が便利です。この「薄っぺらい」という点が半紙で書いた場合の弱点です。ただ、薄いですが、筆ペンや小筆で書いたくらいの墨量では、乾燥後も大してシワシワに波打ったりはしないので、裏打ちをしないでも許容範囲の出来栄えにはなるかと思います。

 

(ちなみに、半紙の裏打ちでしたら家庭用の簡易的な方法として、アイロンで裏打ちができる商品も市販されています。書き上げた作品をしっかり自然乾燥させ、水を霧吹きしてシワを伸ばしたその半紙に、専用の裏打ち用紙を重ね合わせてから、アイロンで熱圧着することで裏打ちをするアイテムです。ですが、アイロン後に反り返ったり、予想外のシワが入ったりと、意外と失敗する可能性も高いので、本番をやる前に練習が必要です。)

筆ペン(顔料インク・染料インク)を霧吹きで濡らした場合の比較
耐水性比較 (顔料インクの筆ペン VS 染料インクの筆ペン)

愛情・魂のこもった親の命名書であれば、字の上手い下手には一切関係なく、どんな書道家のものよりも価値があると思います。是非命名書作成に挑戦してみてください。きっと、将来お子様にとって宝物になると思います。